大成大手町ビル(旧日清生命館)

ビル街の谷間で輝く、壁1枚の時計塔

現名称(旧名称)大成大手町ビル(日清生命館)
竣工年1932/1997(建替え)
設計者佐藤功一/大成建設(建替え)
施工者大林組/大成・清水・野村・長谷工・白石建設共同企業体(建替え)
構造鉄骨鉄筋コンクリート造
所在地東京都千代田区大手町2-1-1

東京・大手町の高層ビル群の真っ只中に立つ美しき時計塔。石張りの細やかな装飾の施された時計塔である。ただこの塔は壁1枚の厚さしかないのだが…。

これはかつてこの地に立っていた日清生命館を建て替える際、新しいビルの低層部に外観デザインだけ再現したもの。日清生命館は日清生命の本社として佐藤功一の設計のもと、1932年に竣工している。佐藤功一は建築好きなら覚えておいて損のない人物で、早稲田大学建築学科の初代教授として、村野藤吾をはじめとした数あまたの建築家を世に送ったことで知られる。佐藤自身も腕の立つ建築家で作品数はとても多く、中でも有名な作品といえば大隈講堂や日比谷公会堂が挙げられる。

左側、交差点に面して塔を置く一方で右側にも小さな尖塔が乗っている 見逃してしまいそうになるが、いいアクセントになっている 

この日清生命館、かつては最上階に「永楽倶楽部」という社交施設が設けられ、美しいインテリアが広がっていたという。建て替えで部屋はなくなったと思われるが、その痕跡は実は再現された外観からも分かる。上層に柱が2本ペアになって並んでいるのが分かると思うが、このフロアに「永楽倶楽部」はあった。

社交施設のある上層部(7階)、事務室が並ぶ中層部(2-6階)、玄関のある低層部(1階)でデザインが異なっていて、上下3層に分かれているのがお分かりと思う。こうした3層構成は主に古典主義系の建築で多用され、戦前期のオフィスビルなどでよく見かけるので、注目して見ると面白いかもしれない。

北西から見た旧日清生命館再現部 実はこちらの角にも小さな尖塔がつく
創建当時のパース 全体は典型的な箱型のオフィスビルだが塔が個性を主張する  丸ノ内クラブ社『丸ノ内画報』1934より

「景観保存」ということで、元に近い材料を用いて外観だけ再現しており、元の壁を残したというわけではない。だから今ある時計塔からは古びた美しさというものは感じられない。でもカタチだけでも精巧に再現されているので、設計者のデザインの巧みさ、装飾の美しさを今でも体感できる。例えば角地に置かれた時計塔。高すぎず低すぎない絶妙なバランスの良さ。正面玄関の照明や扉、2階に配されたテラコッタ装飾に目を向ければ、ガラス張りの超高層ビルに見飽きた目に癒しを与えてくれる。

壁1枚の薄さ、材質が変えられたことは惜しいが、それでも東京で屈指の美しさを誇る時計塔といえよう
かつてビルは来訪者を迎え入れる玄関を必要以上に贅沢に作り込んでいた その熱量をここに感じ取ることができる
精巧に再現されたテラコッタのレリーフ
2階を彩るテラコッタ装飾 無機質なガラスのカーテンウォールが立ち並ぶ街並みに温もりをもたらしている

これはあまり知られていないと思うが、このビルの北側に回り込むと大きなガラスのアトリウムがあって、そこに入ると端っこに旧日清生命館に関する小さな展示スペースがある。旧建物の図面や写真が展示してあるので興味ある方は見てみると面白いかもしれない。「永楽倶楽部」の写真も展示されていて、かつてのビルを偲ぶことができる。

旧日清生命館に関する展示コーナー 管理者からも忘れられているのか若干くたびれ気味ではあるが
反対側の壁には佐藤功一(多分)のお顔が彫られた銘板があるが、訪問時は工事で近寄れなくなっていた

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